笛の音

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先日、仙台市の日立システムズホールで開催されたお能の公演を見に行った(第33回市民能楽講座)。
演目は、宝生流の「殺生石(せっしょうせき)」。
ご覧のとおり、通常のホールを利用した仮設舞台なので若干見づらくはあったのだが、それでも十分に楽しむことができた。会場はほぼ満席。年配者がほとんどかと想像していたら、さにあらず。若い人も多かったし、外国人の姿も。
首都圏と違って、地方都市ではお能の公演自体が数少ない。江戸時代には各藩にお抱えの能楽師がいて、また武士階級のみならず、謡曲が庶民の嗜みだった時代から比べれば、本当に「細々」といった感じではある。それでも、日本の伝統芸能に触れてみたいという人は少なくないんだね。
今回の2,000円というチケット料金は格安(能楽堂で見るときの相場は大体6,000円)。仙台フィルハーモニーの定期公演も、その実力に比してとても安価で購入できるので、仙台市の文化行政はなかなか頑張っていると言えそうかな。
笛の音が響き渡ると、場の空気が一変する。時空がいっぺんに歪んで、今も昔もないような気がしてくる。その瞬間が、お能を見るときの一番の醍醐味だといつも思う。
「殺生石」は那須野の原が舞台ということもあり、笛の音は荒野を吹きすさぶ風の音、鼓や太鼓は、樹々のざわめく音や獣たちの声といった、人外の響きを模しているようにも感じられた。
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# by eguchitakashi | 2014-12-12 20:43 | Comments(0)

問い掛ける場として

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先日、福島駅前のアートスペース「キッチンガーデン」で開催中の「福島写真美術館プロジェクト成果展」を見て来た。
このプロジェクトは、福島県立博物館が中心となって運営している「はま・なか・あいづ文化連携プロジェクト」の一環として、写真や映像表現により福島の今を捉えようとする企画。「福島写真美術館」とは、ハコモノではない、仮構された存在としての移動ギャラリーである。
以前にも同じ場所で、同じプロジェクトの企画展が開催されていたのだが、今回は展示スペースも大幅に拡大して、さらに充実した展示会となっていた。やや荒涼とした会場の雰囲気が、インスタレーションを中心とした作品群によく似合っている。
震災や原発事故を作品のモチーフに用いることや、それらが「写真・アート」と「福島」とを結びつける縁となっている現実には、僕はすごく抵抗がある。
ただ、アートの役割とは「問い掛けること」であり、あるいは「自問のきっかけ」だとするならば、見えてくる景色もまた違って来ると思う。

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# by eguchitakashi | 2014-12-11 20:39 | Comments(0)

それだよ!

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樋口清之くんは、仙台のカロス・ギャラリーを通じて出会った写真仲間の一人で、僕よりも一回りくらい歳下で、同じ福島市内に住んでいる。
どういうわけか僕のことを「写真の師匠」のように慕ってくれているのだが、僕の方はいつも心を鬼にして、獅子が我が子を谷底に突き落とすような気持ちで、彼が見せに来る写真にダメ出しを繰り返している(ときどきは褒める)。
しかし、今日彼が、自分のWebサイトにアップした作品集は、真正面から褒めたい。
いわゆる「アート」ではないかもしれないけれど、彼のストレートな眼差しと表現することへの意欲がしっかりと絡み合って、とてもいい「写真」になっていると思うのだ。

以下のブログ経由で、ご覧いただけます。
http://firemouth2.exblog.jp/20492708/
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# by eguchitakashi | 2014-12-10 19:45 | Comments(2)

熊谷毅写真展「crawl」

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個展を開く、と言ったときに、人はそこに何を思い浮かべるだろうか?
或る作家の(高額な値札のついた)傑作選だろうか。人生を賭して追い続けるテーマとモチーフの集大成だろうか。あるいは、心に秘めた一つの世界観を提示する舞台。
アートとしての写真作品を作り続けている作家であれば、作品の展示は(なかんずく個展は)、往々にして「自分の世界観を作品の形で見せる」場となる。
だが、世界観とは、果たして何なのだろう?
世界をどのように見ているか、どのように解釈しているかのことだ、と説明してみたところで、決して合点のゆくものではない。なぜなら、我々はそのような形では世界と向き合っていないから。世界と、その中で生きる人間の関係は、そのような単純明快でわかりやすいものではあり得ないから。
アートにできること、写真にできることというのは、「世界観」と呼ばれる繭に少しだけ切れ目を入れて、すぐまた元通りに閉じる行為なのだと思う。傷口を閉じたあとには、うっすら血のようなものが滲んでいる。
写真展を見ながら、そのようなことを考えた。そのようなことを考えたくなる写真展だった。

熊谷毅写真展「crawl」
カロス・ギャラリー(仙台市)にて
12月28日(日)まで(月曜休廊)
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# by eguchitakashi | 2014-12-09 21:59 | Comments(0)

冬の贈り物

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福島市荒井の「珈琲楓舎」では12月10日(水)から23日(火)まで、「珈琲楓舎からのおくりもの」が開催されます。

「珈琲楓舎が心惹かれたおくりものを集めた展示会です」

開会には少し早いですが、今日から新作を1点、展示していただきました。
タイトルは「vibrationのvariation」(ヴァイブレイションのヴァリエイション)といいます。
思いきって抽象の方向に振った作品です。ぜひご覧になってみてください。

そして、趣向を凝らした「おくりもの」の数々を楽しんでいってくださいネ。
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# by eguchitakashi | 2014-12-06 19:51 | Comments(0)

思い出話

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俳優の菅原文太さんが亡くなられた。
役柄の印象で広島生まれのような気がしてしまうが、仙台市の出身。
僕が高校生だった頃、菅原文太さんと高校の同級生だったという英語の先生がいらして、授業中によく思い出話をされていた。一つ下の学年には作家の井上ひさしさんもいらしたそうで、小説の「青葉繁れる」はちょうどその時代が舞台となっている。
愉快な先生だった。お元気だろうか。
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# by eguchitakashi | 2014-12-02 20:16 | Comments(0)

ひたひたと

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先日、所要で東京に行って来た(たぶん、東京に出掛けるのは、今年はこれが最後)。
帰りに、いつもお世話になっている銀座のArt Gallery M84にお邪魔して、開催中の写真展を拝見した。
JITTERという、4人の写真家グループによる展示会である。タイトルは「ほの明るい と うす暗い」
それぞれ方向性がまったく異なる作品づくりや展示方法なのだが、不思議と4人とも波長が似通っていると言うのか、苦しみながら、楽しみながら、写真を通して自分の表現世界を形にしようという想いがひたひたと伝わってくるように感じられて、よいものを見たと思った。6日(土)まで。
ギャラリーオーナーの橋本さんからは、先月見に行かれたばかりというパリのフォトフェスの模様などについてお話を伺った。フェイスブック等を見ていると、知り合いの方も含め、多くの日本人の写真家が今年もパリを訪れたようだ。いつか機会があったら行ってみたいと思うけれど、そこまで梯子を伸ばすには、まだまだ精進が必要だな。
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# by eguchitakashi | 2014-12-01 20:44 | Comments(0)

一つの方法論

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納得の行く写真が撮りたいと思ったら、機材はなるべく替えない方がいい。
気に入ったカメラやレンズをせめて1年、少なくとも2年くらいは使い続けて、どのようなときにどのような写りをするかをしっかりと掴んだら、それをベースに自分の写真世界を作り上げてゆく。
骨の髄まで味わい尽くしたと思えたら、次の機材を選ぼう。
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# by eguchitakashi | 2014-11-29 16:26 | Comments(2)
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帰化植物のセイタカアワダチソウやオオハンゴンソウは、どちらかと言うと嫌われ者な存在だけど、写真の被写体として見ると思いの外、魅力的だったりする。
セイタカアワダチソウは、今日の写真のようにたっぷりの秋の日差しを浴びた光景が、夏の終わりの山蔭に咲くオオハンゴンソウには、少し湿った感じの夕暮れのシーンが、それぞれ似合うと思う。
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# by eguchitakashi | 2014-11-28 19:31 | Comments(0)

写真家・江口敬のブログ


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